Twitterで100社から採用オファー、Sansan西場正浩氏に聞く「エンジニアの市場価値は何で決まるのか?」

エンジニアを生業とする人の間では、「自分のキャリアプランを見定められない」、そのために「どのようなスキルを磨き、どのようなアウトプットをすべきか迷ってしまう」という悩みを抱える人が増えているようです。

「キャリアパス」とはそもそも、自らの「市場価値」を短期的、中長期的にも高めるための手段。では、エンジニアの市場価値とは何で決まるのでしょうか?

今回は、2021年4月、当時の退職に100件以上の採用オファーDMが殺到し、最終的に選んだ転職先のSansan株式会社で入社半年でVPoE(VP of Engineering)にスピード抜擢され、執行役員としても活躍する西場正浩さんに、自身の経験を交えてお話を伺いました。

プロフィール

Sansan株式会社 VPoE 西場正浩
大学院で数理ファイナンスの博士号を取得後、大手銀行で数理モデルの開発に従事。その後医療系IT企業でエンジニアやプロダクトマネジャー、事業責任者、採用人事などを幅広く務める。2021年にSansan株式会社へ入社。技術本部研究開発部でマネジメント業務に当たり、現在はVPoEとしてエンジニア組織の整備と強化を担う。

「求められるエンジニア」はいつだって変わらない

—— 「自分のキャリアプランを見定められない」と悩むエンジニアが増えているようです。

個人的には、「求められるエンジニア」というものは大きくは変わっていないと思います。技術力が高くて、手を動かしてモノを作って、課題解決ができる。それを高いレベルでできる人は、今も昔も求められるのではないでしょうか。

結局エンジニアは専門職なので、専門性は求められます。そのときに必要なツールを適切に選んで仕事ができる人、僕も昔はそれを目指していたし、今は採用者として、そういう人が来てくれると嬉しいなと思います。

例えば、最近Sansanに来てくれた堤修一さんという方は、元々iOSエンジニアとして有名なんですが、Bluetoothに詳しくて本まで書いているんです。

エンジニアの仕事をしていると、「必要な知識を得たいのに日本語で資料がない」みたいなことってよくありますよね。彼のように、何かを徹底的に調べてまとめると、その道の「第一人者」に近づける可能性があります。

今ならWeb3とか、クリプトとか、もう遅いのかもしませんが、そうした流行り始めの技術でチャレンジするというのはいいかもしれません。

もう一つ付け加えるとすれば、変化に対応できる人。時代も会社もどんどん変わっていくので、その変化に適応しながら高い専門性を発揮し続けられる人はありがたい存在です。

市場価値を高める手がかり、実は「目の前の仕事にある」

——変化に対応していくうえで、「何を学べばいいのか分からない」というエンジニアも少なくありません。

その気持ちは分かる一方で「何でもいいんじゃない?」とも思います。

市場が求めているものって、そんなに単純ではないからです。「この技術を1つ身につければ市場価値が上がる」みたいなのは、探してもそうそう見つからないと思いますよ。

Sansanに来てもらうエンジニアにしても、特定の言語を使えることがそこまでプラスになったりはしません。会社としてはさまざまな言語を使っていますし、クラウドも、AWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)、Azureも全部使っているからです。

逆に言えば、1つ欠けていたからと言ってそれで判断することもありません。将来使う技術が変わっていくであろう中、現時点で特定の何か1つのスキルを身につけることが、特段メリットになることは少ないのかなと思います。

何を手がかりにすればいいのかというと、それは、自分に必要だけど足りない技術というものは、結局、実際に自分の手を動かしてモノを作っていく中で気づくものではないでしょうか。

そのため、学びの方向性としては、今携わっている仕事を起点に、その周辺領域を学んでいくとか、関連する技術力を高めていくとか、それが正解だと思います。

わが身を振り返ってみても、自分の市場価値を上げるために身につけたスキルはありません。ひたすら目の前の仕事を一生懸命やってきただけです。

前職ではPdM(プロダクトマネジャー)もやりましたけど、それも自分の市場価値を高めるためではなく、会社の課題を解決するうえで、僕がPdMにチャレンジすることが必要だと感じたからです。

任された場所で高い数値目標を設定すると、既存の取り組みを改善するだけでは達成できないから、新しい切り口、プロダクトを作って売っていこう、となります。

そうして、とにかく目の前の仕事に取り組んだ結果、PdMとしての仕事が増えていき、自分の今のスキルセットが出来上がっていった。そこに打算はありませんでした。

もしもエンジニアが自分のスキルを磨くために何ができるかというと、それは自分のチームのマネジャーに「どうしたらいいか?」と尋ねることに尽きますね。

上司やメンターに聞くことは、会社の課題を解決するうえでとても大切。会社からの評価が高い人は自然と市場価値も高まるでしょうから、個人の想像だけで動くのは得策ではないと思います。

学習はプライベートではなく業務で。期待以上の成果を

—— 何を学ぶかを決めたうえで、「学習と日々の業務や家事育児との両立」に悩む人も多いようです。

僕も今子育て中で、2人目のために育児休暇を取ろうかなとも考えているんですが、その人のライフステージやライフイベントによって、学習の状況は変わるものです。

基本的に、スキルを上げるには学習をしないといけないのですが、学習はプライベートでしかできないわけではなくて、業務中にもできるものだと思います。

例えば、今までやったことのない技術のプロジェクトに関われば、その技術について業務として調べたり、その技術を使って何か作ったり、新しい経験が勉強になります。

僕もこの間、小さなことではありますが、GAS(Google App Script)をはじめて書いたんですよ。同僚が、何か予定をカレンダー登録するのが面倒で、「ボタン一つでカレンダーに予定が書き込まれるようなのがあればいいな」というのでやってみました。

業務中に30分ぐらいで書いて、その過程をまとめたりもしました。そういうアウトプットや知見は、結局会社に貯まっていくものなので、必要に応じて業務時間を割いてもいいのではないかと思います。

それに、先ほど話した僕のPdMとしてのスキルが磨かれたのも、業務としてやったことが結果として学びにつながったという話でして、今携わっている人事の仕事にしても、プライベートだけで学べることでもありません。

多くの会社では、今与えられた場所で成果を上げていれば、新しいチャレンジをしたい場合、その役職に就かせてもらえるものではないでしょうか。特に日本の大企業だと、総合職として採用してさまざまなことを経験させるような文化があったりしますよね。

ただ、業務を通じて学習する際に大切なことは、「与えられた仕事を求められた水準以上に達成すること」。その中で、新しいチャレンジも生まれてくるわけで。学びの基本は業務だと思っています。

高めた市場価値をキャリアアップにつなげる「情報発信」

—— そうして高めた自らの市場価値をキャリアアップにつなげるうえで大切なことは何でしょう?

自分のキャリアアップとかよりも、「いかに会社を通じて社会に貢献するか」が一番ですね。会社を通じて社会に貢献するために、「結果的に」自分が成長するという順番があります。僕も、「今、次の転職を意識して仕事をしているか?」というと、まったくしていません。

一つだけ、打算的に意識していたのは「情報発信」ですね。ブログやSNS、イベントなどで顔を知っておいてもらえば、何か告知したときに見てくれる人が増えるわけで、それが現在の採用活動にも役立っています。

一方で、情報発信はコミュニティ貢献が本来の目的です。自分が他の人のブログやイベントで勉強させてもらったので、今度は自分が他の人のために恩返ししたいからやる。そのためには、何か新しいことを学んだり、仕事で成果を出していることが前提になります。

情報発信を仕事につなげるという意味では、僕は「LAPRAS」が好きで昔からよく使わせてもらっています。

普通のブログなどの場合、埋もれてしまい、読者に見つけてもらいにくい面があります。一方LAPRASはポートフォリオなので、それを見た人がブログも読んでくれることがありますよね。SNSでつぶやかなくても必要な人に届く、とても便利なサービスだと思います。

情報発信をするうえで大切なことは、他者を攻撃しないとか、嘘を書かないとか、無断利用しないことは当たり前のマナーとして、「中身のあるものを書きましょう」ということに尽きますね。同じエラーにハマった人が読みに来てくれたとして、その人が解決策を再現できるようにソースコードをちゃんと貼ってあるといいですよね。

自分のためにまとめるにしても、発信する以上、読む人がいることを想定して、その人は何が知りたくてその記事を読んでいるのかという視点に立つことが大切です。

編集後記:エンジニアの市場価値とは、課題解決につながる専門性と変化に対応する力で決まるもの。それを高めるうえで、今学ぶべき技術とは、実際に自分の手を動かしてモノを作っていく中で気づくことが多い。だからこそ目の前にある仕事に全力投球し、その過程ではチームのマネジャーなど周囲にアドバイスを求めることも大切。そうして学んだことはコミュニティへの貢献を意識して発信していくーー。その学びのサイクルを続けていくうちに、キャリアの転機が訪れるのかもしれません。

[取材] 岡徳之 [構成] ウルセム幸子

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