グローバルで活躍するテックリードのキャリアの軌跡

ノルウェー、シンガポール、日本とグローバルに活躍してこられたインフキュリオンのテックリードのDanielさんにこれまでのキャリアをお話を伺いました。

<プロフィール>
株式会社インフキュリオン テックリード Daniel Dyrnesさん

ノルウェー出身。コンピューターの修理技術者や大手コンサルティング会社でエンジニアを経験後、2015年にワーキングホリデーで来日しピアノ講師向けレッスン管理システムの開発などを行う。2016年には、マッチングした会社があるシンガポールへ。スタートアップ4社でプログラミングとアーキテクチャを担当する。2022年に再来日し、フリーランスを経て、現在は株式会社インフキュリオンのテックリードとして活躍されている。

これまでのキャリア

ーこれまでのキャリアについて教えてください。

高校を卒業してすぐにコンピューターの修理工場で修理技術者として働き始め、主にサーバー管理の仕事をしていました。
倒産をきっかけに大手コンサルティング会社に転職しエンジニアとしてプログラミングを行っていました。その後来日し、1年間ワーキングホリデーを使い、東京の日本ピアノ指導者協会でピアノ講師向けレッスン管理システムを開発をしていました。
ワーキングホリデーを終えた後は、シンガポールに行きました。シンガポールではスタートアップを4社経験し、いずれもプログラミングとアーキテクチャを担当していました。その後、フリーランスとして韓国や日本で働いた後に、インフキュリオンで働いてます。

ー出身国のノルウェーに残って別の仕事を探すのではなく、日本に来ることを選んだ理由は何ですか?

友人の影響で日本を訪れたのが最初でした。それがきっかけで日本が好きになったからです。

仕事を選ぶ基準

ー仕事はどのような基準や軸で選んできましたか?

私の技術とその会社が持つ技術に親和性があるかどうかで選ぶことが多いです。
また、事業内容や開発しているプロダクトが自分の興味に合うものであったり、その技術が面白い会社には魅力を感じますね。

ー慣れ親しんでいる技術か、新しい技術だとどちらを重要視しますか?

自分がよく知っている技術に携わる方が理想的です。
今まで経験したことのない技術に挑戦する場合は、会社に価値を提供するまでの期間が長くなってしまうため、私は慣れ親しんだ技術で開発する方が良いですね。
ただ、個人で勉強し開発しているフレームワークなどであれば、即戦力にならなくても挑戦を検討する価値はあると思っています。

ーこれまでのキャリアの中で最も影響を与えた出来事は何でしたか?

ノルウェーで働いていたコンピューターの修理会社が倒産したときですね。
当時は、ソフトウェアよりもハードウェアに触れる仕事をしていたので物理的な装置を扱うことが多く、もしあの会社が倒産していなかったら、ソフトウェアの道に進むことはなかったと思います。

取材はリモートで実施

日本と海外の転職の違い

ーこれまで何度か転職をされていると思いますが、シンガポールに行かれた後、また日本に戻られたこともありますよね。転職を考えた一番の理由は何だったのでしょうか?

シンガポールでは1年以内に転職していました。
スタートアップでは、入社時に製品と価値観に共感できても、方針変更などで状況が変わってしまうことがあります。その結果、私の希望や方向性と合わなくなった場合は、やるべきことをやりきり、スキルアップしたら、次のステップに進む事が多かったです。

ー周りの人も頻繁に転職していたのでしょうか?

スタートアップのコミュニティでは、ほとんどの人が同様に入社1年〜2年目で転職をすることが多いです。
もちろん大企業では違いますが、アメリカでも1〜2年のスタートアップの場合は同じですね。サンフランシスコにいる私の友人も同じくらいの期間で転職をしていると聞いたことがあります。

ー日本では、2〜3年で転職することが多いように感じていますが、シンガポールなど海外と比べて、日本の転職事情に違いを感じますか?

私はまだ日本でそれほど多くの会社で働いているわけではありませんが、日本では確かに長く勤める人が多いように感じます。
それは、日本では会社が従業員をより大切にしているからなのかもしれません。日本では、会社との関係性みたいなものがありますよね。シンガポールでは、会社が提供するのは給料とストックオプションのみで、ある意味カジュアルです。
会社はそれを知っているし、従業員もそれを知っています。
シンガポールでは、日本と労働法令が異なることから解雇が効率的に行われますので、すぐに解雇される可能性もあればすぐに雇用される可能性もあります。

日本では実際に契約を結んでいれば、解雇するのはかなり難しいように感じます。
雇用主と被雇用者の間には、深い関係があり、会社が従業員のことを気遣ってくれるため、会社に対する尊敬の念も生まれているのだと思います。

テックリードの仕事と責任

ーテックリードとしてどのような責任があるのでしょうか?

私の仕事はプロダクト開発において技術面で責任を持ち、チームを支援をする立場として技術に関して方向性を定めます。
例えば、どのようなAWSのサービスや技術を使用すべきかなど、アーキテクチャに関する意見を述べたり、技術選定で自分の知見を活かしています。
またオプションリストを洗い出し、意思決定のプロセスなどをドキュメントにまとめることで、他の誰かが特定の決定を下す際になぜこれを使うことにしたのかを読み取ることができるようにしています。総じて私の役目はツールボックスのようなものだと思っています。

ー大小に関わらず、決断を下すのは本当に難しいことだと思います。
また仕事中に直面する苦労もたくさんあると思います。過去に遭遇した困難な出来事などはありますか?

過去の会社での出来事になりますが、本番用データベースと開発用データベースを適切に分離していなかったことによるトラブルですね。
本番用データベースにログインしたことで、多くのデータが壊れてしまいました。
幸いバックアップがあったので、なんとか復元することができましたが、安易に全員が管理者アクセス権を持つべきでないということと、細かく権限を分けることが大事だと学びました。

2、3人程度の非常に小さなチームの場合、全員にすべてのアクセス権を与えてしまうことは少なくないと思います。テックリードやCTOならルールを決め、人数が少なくても従業員全員に対して適切な手順や権限体系を確立して、コントロールする必要性を認識することが重要だと思います。

テックリードとして活躍し続けるために

ーテックリードとして新しい技術を学んだり、最新の技術に追いつくために何かしていることはありますか?

日頃から、個人開発には真摯に取り組んでいます。自分が学びたいことはもちろん、それ以外のことに対してもです。普段触れたことのないものや、YouTubeで見たもの、メディアで読んだものなど、面白そうだと感じた新しいものには積極的に挑戦しています。
新しいアプローチだけで簡単なことをやってみようと挑戦することもあります。
以前やったことがあるとしても、別の方法でやってみると、想像以上にそこから多くのことを学ぶことができます。

ー本業と並行して個人開発に取り組む時間を確保するのは大変ではありませんか?

もちろん、いくつかのことを犠牲にしなければならないですが、個人開発であれば、いつでも自分の好きなように混ぜ合わせることができるので趣味の一環でやれます。また、技術の進歩はとても速いので、できるだけ優秀なエンジニアになろうと思うのであれば開発して終わりということはなくて、頑張ってついて行く必要があると感じています。

キャリアの決め方

ーインフキュリオンさんに入社された決め手は何でしたか?

取り組んでいるプロダクトがとても気に入りました。
インフキュリオンのプロダクトは、毎日非常に多くの人に影響を与えているものです。
意識することなく使っているこのような重要なインフラ開発に携わることができるのは、とても楽しいし、社会に役に立っているという実感が湧きます。
また、使用しているプログラミング言語がマッチしていることと、社風が気に入っていることも理由です。

居心地が良い企業風土があり、小さなスタートアップとは違って異なるテクノロジーを使う部署間を跨いで仕事をすることもできます。会社全体がとてもフレキシブルで働きやすく、優秀なエンジニアがたくさんいるので自分以外の人から学ぶ良い機会もあります。

ー日本で魅力的な企業を探すことに難しさを感じますか?

私の場合は、言語が最大の壁です。
また、北海道に住んでおり、出社がハードルになって選択肢が狭まります。英語が社内で通じて、フルリモートで、スタートアップ文化を持つ日本の会社を見つけるのはかなり難しいと感じています。

最近気づいたのですが、大企業が新規事業などでスタートアップを作ることも多くなっています。私が日本に来た8年前よりも確実に増えています。
特に高いレベルのポジションは、そのような企業も選択肢にはなると思っています。

テックリードになれる人とは

ーテックリードやCTO、エンジニアリングマネージャーなどのポジションに就く人はどのような素養があると感じますか?

自分の決断や能力が会社に大きな影響を与えることになるので、自由時間の多くを自分で勉強することや、プロジェクトの検証をすることなどに費やす必要があります。日々勉強し、考え、役立つものを提案して決断できるようにしなければいけない。そこに対価が発生しなくともやり続けることができる人、また、マネジメントとチームを管理するという期待に応えられる人ではないと難しいのかなと思います。

マネジメントやドキュメント作成にリソースを割くことを嫌い、エンジニアとして要求があるときしか自分の技術を磨かない。このような考えでは、そういったポジションに就くことは難しいと思います。なので、テックリードの能力があっても自分の意志でやりたくない人もいますね。

ータフなポジションですが、テックリードとして頑張る原動力は何ですか?

「技術的なことを探求する」という行為が私は好きです。コードレベルではなく概念的な部分で、よりよい価値を生み出せるよう、探索的に試行錯誤できることが原動力かもしれません。
エンジニアの時代よりコードを書くスキルは劣るし、私よりプログラミングできる人はいるのですが、私は概念的な探究を楽しむ方向に進みました。
もう少し具体的に言うと、新しい技術やアプローチを使い、効率的なアーキテクチャを見つけようとするようなことですね。プロダクト全体を改善しようとすることは、概念的なレベルで考えることであり、とても興味深いと思っています。

ー今後のキャリアプランはありますか?

そうですね、いつかは自分のスタートアップを作りたいと思っています。

ーそれは楽しみですね!本日はありがとうございました!