フリークアウトの社内制度について聞いてみたら、OSSへの愛が溢れていた。

LAPRASは3月17日から3月31日まで、春のOSS祭りキャンペーンを開催しています。

キャンペーンに伴い、LAPRAS NOTEではOSSに関わる人や企業、コミュニティにインタビューを行っていきます。

今回の記事では、OSSコミッター手当という社内制度を持つ株式会社フリークアウト CTOの西口さんにお話を伺いました。
社員に対しての支援制度である一方で、目的は他にもあると話す西口さん。制度設計の背景には、OSSに対する強い想いがありました。

《プロフィール》
株式会社フリークアウト CTO 西口次郎さん
2013年9月、エンジニアとして株式会社フリークアウトに入社。入札、配信、DMP、ログ基盤、インフラなど、幅広く担当。2017年1月、執行役員CTOに就任。2019年10月、取締役 CTOに就任。国内外の事業開発および技術責任、約60名のエンジニア部門のマネジメントを担う。2020年1月、株式会社フリークアウト・ホールディングス執行役員に就任。

株式会社フリークアウト:
フリークアウトは、国内初のDSPをローンチしたマーケティングテクノロジーカンパニーです。ブランドマーケティング、認知拡大、需要喚起、新規見込み顧客の獲得を目的としたマーケティングプラットフォーム「FreakOut」と、モバイル上での顧客獲得、販促活動を最先端の独自機械学習エンジンによって効率化するモバイルマーケティングプラットフォーム「Red」、独自広告配信プラットフォーム開発・運用支援の「Red for Publishers」を提供しています。通信キャリア、航空会社、飲料メーカー、トイレタリー企業をはじめ15,000アカウントを超える顧客に当社プラットフォームをご活用いただいております。また、マーケティングテクノロジー領域での知見を活用したジオマーケティングプロダクト「ASE Ad」、「ASE Analytics」を提供し、流通・小売業の抱える様々な課題解決を支援しています。

業務で使うOSSから趣味まで、エンジニアの自己研鑽をサポートする制度

― OSSコミッター手当について教えていただけますか?

社員を対象に、何らかのOSS活動の実績を申請して、承認されれば次の半期に毎月3万円が支給されるという制度です。

承認にあたっては、世の中の誰かに貢献できているかどうかを1つの目安にしています。例えばコード修正の場合、1バイトの変更であっても、重要で誰かの役に立つものであれば認められます。

― 最近で承認された例を教えていただけますか?

社内で使っているmemcachedや、fluentdへコミットした例などがありますね。
変わったものでは、Kaggleで上位に入った社員が手法に加えてコードも公開していた例もありました。OSSかといえば厳密にはそうではないかもしれませんが、世の中の誰かに貢献できているという意味では対象になります。

― 社内で使うOSSへのコミットは業務時間中に行うこともあるんですか?

フリークアウトでは、本番環境で使用するソフトウェアはほとんどオープンソースのものしか使っていません。業務で使う中で気付いた問題を業務時間中に直していくというケースも多いですね。もちろん業務時間外に趣味として活動しているケースもあります。

現在は、60名強いるエンジニアの中で、だいたい1/4がOSSコミッター手当を申請しています。

― 自社で使っているOSSの気になるところを自分たちでメンテナンスしているようなイメージですね

おっしゃるとおりです。
業務に必要だからOSSにコミットしているということもありますが、目的としては「エンジニアの自発的な技術研鑽の推奨」と「優秀なエンジニアの採用促進」という2つの大きな柱があります。後者の採用についてのメリットは、あるとは感じているものの、実はそこまで重要視しておらず、前者の技術研鑽とそれを推奨する文化を作っていきたいという目的のほうが大きいです。

実際に、業務の中で見つかったOSSのバグ修正や、ほしい機能の追加も「OSSコミッター手当があるし、やってみようか」というモチベーションの後押しになっていると感じていますね。

また、OSSへのコミットだけでなく、エンジニアのアウトプットについての取り組みは積極的に行っています。

社内のエンジニアは裁量労働制を採用しているので、時間の都合をつけて勉強会に参加するのも自由ですし、「FreakOut Backyard」という自社ブログでエンジニアの登壇情報を公開しています。

社会をより良くしていくOSS活動に社員も参加してほしい

― OSSに貢献することを推奨する文化を作っていきたいと思ったのはどうしてですか?

オープンソース文化をサポートすることで良いプロダクトが生まれたり、社会がもっと良くなっていくと考えているからです。

例えば、Linuxをはじめとするオープンソースの文化がなければ、今の世の中は全く違ったものになっているはずです。オープンソースによって技術が発展したり、より良いプロダクトへの活用を通じて社会への良い影響も生まれます。

GAFAM等がやっているような大きなものでなくても、小さくてもいいからどんどん自分たちもコミットしていき、もっと良い技術を生み出し、良いプロダクトが生まれる社会を作っていきたいと思うエンジニアは多いと思いますし、エンジニアだからこそオープンソースを通して社会貢献しているという実感を得られると考えています。

社内のメリットというよりも、OSSを通した社会への良い影響を目的としているんですね

そうですね。OSSコミッター手当は社員に対しての支援ですが、会社としてのオープンソースに対しての姿勢を見せていく、社員にも賛同してもらいOSS開発をサポートしていくということが本来やりたいことです。

もちろん、採用への影響など会社としてのメリットもあると感じていますよ。
採用などでもOSSコミッター手当についてお話すると、良い反応をもらえることが多いですね。

― 有名なOSSにコミットしている様子を見ると、それだけで優秀なエンジニアがいることが分かりますし、そういうエンジニアが活動できるような機会を企業として提供しているというのは、エンジニアにとって働きやすい環境なんだろうな感じます。見せていただいたOSSコミッター手当の一覧もぜひ社外に公開してください!

それはいいアイデアですね。社外への公開について検討してみますね。

世界の役に立つことがエンジニアの喜び。OSS活動はそれを実感できる機会

― 西口さん自身もOSS活動は行っているんですか?

2005年から現在までずっと続けていますね。
当時は株式会社ライブドアに勤めていて、社内には技術的に優秀な方が沢山いました。

ライブドアで使っていたPerlのSledgeというフレームワークがオープンソースで、そのプラグインを開発したのが初めてのOSS活動だったと思います。

近年では、Zstandardという圧縮ライブラリを、Perlから使えるようにしてフリークアウト社内でも使っています。

他にも、動画広告関連のサービスで活用しているMP4のライブラリも私が開発しました。社内で使っていますが、フリークアウトのサービスに特化しているわけではなく汎用性があるものですので、他社のサービスでも活用してほしいと思っています。

西口さんのPerlモジュールが公開されているページ

― ちなみに業務以外でのOSS活動はいつやられているんですか?プライベートの時間を割いて活動されていると思いますので、セルフマネジメントをどのように行っているか伺いたいです

先ほどお話したように、業務で使うものは業務時間に作ることが多いです。プライベートでは移動中などのスキマ時間に行うことも多いですね。ちょうど先ほどお話ししたMP4のライブラリは新幹線の中で作りました(笑)。

― 新幹線の中ですか、本当にスキマ時間ですね!

私はCTOという立場ですけど、現場のエンジニアでもあると思っています。本当に技術が好きなんですよね。

なのでプライベートの時間でも、興味を持って調べていたらのめり込んでしまって、試しに実装していたりすると深夜になって気がついたらモジュールが出来上がっているということがよくあります。

エンジニアは他の職種に比べると仕事とプライベートの境目がないことが多く、私自身もそういうタイプなんです。

― 西口さんがOSS活動をしていて良かったということはありますか?

私のモジュールはいろいろな人に使ってもらっていて、メールやFacebookで連絡をもらうことがあります。「これがあって仕事が本当にはかどった」という感謝のメッセージが届くこともありました。

中には本当に思いもよらないところで使われているケースがあったのは面白かったですね。以前にデンマークの公的なサービスで使われていたらしく、そこから「バグがあって困っている」という相談を受けたことがあります。

元々は自分のために作ったものが、オープンソースとして公開したことで世界中で使われていて、誰かの役に立っていたことを目の当たりにできて嬉しかったです。

独善的ではなくて、自分が作ったもので世界が幸せになっていくのが嬉しい。エンジニアにはそういう思いの人が多いと感じていますし、そういう思いをぶつけて、実感できるのはOSS活動なんじゃないかなと思いますね。

― ありがとうございました!